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ダイレクトリクルーティングとは?人材採用戦略と成功のポイント

ダイレクトリクルーティングとは?人材採用戦略と成功のポイント

近年、人手不足の深刻化によって、多くの企業が人材確保に課題を感じています。人材の採用方法にはいくつかの種類がありますが、現在大きな注目を集めているのが「ダイレクトリクルーティング」による採用です。
本記事では、ダイレクトリクルーティングの概要やメリット・デメリット、費用の目安、成功のポイントについて解説します。

ダイレクトリクルーティングとは

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そもそもダイレクトリクルーティングは、どのような取り組みなのでしょうか。従来の採用方法との違いや注目されている背景、向いている企業の特徴について紹介していきます。

ダイレクトリクルーティングの定義と特徴

ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者へ直接コンタクトして採用をおこなう方法です。海外では「ダイレクトソーシング」と呼ばれていますが、日本ではダイレクトリクルーティングの呼び方が主流となっています。
従来の採用活動は、求人広告や求人媒体を通じて求職者の応募を待つことが一般的でした。しかし、ダイレクトリクルーティングでは企業側が主体的に求職者へアプローチする「攻めの採用」であることが大きな特徴です。

ダイレクトリクルーティングが注目されている背景

現在ダイレクトリクルーティングが注目されている要因として、人材獲得の競争が激化していることが挙げられます。少子高齢化が深刻化している日本では、労働人口の減少によって従来の採用方法では優秀な人材を確保することが難しくなっています。
また、近年は採用チャネルが多様化しており、SNSを活用した採用など比較的新しい採用手法を取り入れる企業も珍しくありません。加えて、ITツールの発達やSNSの普及により、従来に比べてより求職者へ直接コンタクトを取りやすくなったことも、ダイレクトリクルーティングが注目されている要因のひとつです。

ダイレクトリクルーティングに向いている企業の特徴

ダイレクトリクルーティングは、即戦力となる人材を求める企業に向いている採用方法といえます。
例えば、一定の専門知識が必要となる職種では、企業のニーズにマッチした人材になかなか出会えないことも少なくありません。その点、ダイレクトリクルーティングでは企業が自ら求職者にアプローチするため、求める経験やスキルを持つ人材を見極めながら採用活動を進めることができます。
またダイレクトリクルーティングは、ターゲットとなる人材が限られており、企業間での採用競争が激しい業界にも適している採用方法です。優秀な人材に直接アプローチすることによって、従来のような「待ちの採用方法」では出会えなかった人材を獲得できる可能性があるのも大きな特徴といえます。

ダイレクトリクルーティングの方法

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採用手法としてダイレクトリクルーティングを取り入れる場合、どのような方法があるのでしょうか。その利用フローと合わせて解説します。

ダイレクトリクルーティングの方法

ダイレクトリクルーティングには、主に「人材データを活用する方法」「自社のSNSを活用する方法」「採用イベントを実施する方法」という3つの取り組み方があります。それぞれどのような方法なのか、くわしく確認していきましょう。

人材データの活用
ダイレクトリクルーティングには、転職サイトや専用プラットフォームに登録されている求職者のデータを活用して採用活動をおこなう方法があります。
この手法には、企業は求める経験やスキルにマッチした人材を絞ることができ、効率的に人材を探せるメリットがあります。すでに転職の意思がある人材の中から候補者を探せる点も、採用活動を効率化できる大きな要因のひとつです。

自社のSNS活用
最近では、自社のSNSを通じてダイレクトリクルーティングに取り組む方法も広がっています。SNSでは求職者へ直接コンタクトを取りやすいだけでなく、企業の雰囲気や働き方を広く発信することが可能です。
これにより、転職を積極的に考えていなかった層にもアプローチできる強みがあります。オンライン上で企業の魅力を発信することで、これまで接点がなかった優秀な人材を発掘するチャンスが広がります。

採用イベントの実施
自社で採用イベントを実施することもダイレクトリクルーティングのひとつの方法です。採用イベントでは会社説明会のほかにカジュアルな座談会などを実施することも多く、従来の採用方法では伝えにくかった企業の魅力や雰囲気を実感してもらえる大きな機会となります。
また、採用担当者にとっては、求職者の人柄やコミュニケーション能力などを直接把握できることから、履歴書や面接だけでは分からない情報を得られるきっかけとなります。これにより、人材のミスマッチを防ぎ、効率的な採用活動をおこなうことが可能です。

ダイレクトリクルーティングの利用フロー

続いて、ダイレクトリクルーティングを利用する際の流れを紹介します。

導入前の準備

ダイレクトリクルーティングを始める際、その事前準備が成功の鍵を握ります。主に以下の点について、事前に社内で検討しましょう。

採用課題の明確化
まずは、自社が抱える採用課題を具体的に整理しましょう。たとえば「求職者からの応募数は多いが、母集団の質が低い」「自社のカルチャーに見合う人材からの応募が少ない」などが想定されます。

採用ターゲットの設定
次に、求める人材像(ペルソナ)を明確に定めます。必要なスキルだけでなく、価値観や働き方に対する考え方なども含めて詳細に設定すると、採用の精度が向上するでしょう。

社内体制の整備
ダイレクトリクルーティングでは、人事担当者だけでなく現場の協力が不可欠です。スカウト作業や面談対応をスムーズに進めるため、社内での役割分担や運用フローをあらかじめ決めておきましょう。

スカウト・選考

準備が整ったら、企業から候補者へ直接アプローチする「スカウト」をおこないます。ターゲットに合わせたメッセージを作成して、個別に送信しましょう。反応があった候補者とは個別に連絡を取り、選考課程へと進んでもらいます。
選考過程では、候補者について深く理解した上で、自社の強みやカルチャーをしっかり伝えることが、入社意欲を高めるポイントとなります。

運用後の分析と改善

ダイレクトリクルーティングの実施後は、スカウト送信数に対する返信率や面談後の辞退率など、各フェーズのデータを分析します。そして、その結果に基づいて、スカウト文の改善やターゲットの見直しなどをおこない、今後の運用に役立てましょう。

ダイレクトリクルーティングのメリット

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ダイレクトリクルーティングのメリットとして、主に次のような事柄が挙げられます。

・長期的な採用コストの削減
・潜在層へのアプローチ
・自社にマッチした人材の獲得
・採用力の向上

それぞれくわしく解説していきましょう。

長期的な採用コストの削減

ダイレクトリクルーティングは企業が自ら主体的に採用活動を進めることで、採用活動にかかるコストを削減できるというメリットがあります。
また、求める人材を見極めてアプローチをおこなうことから、ミスマッチによる離職を防ぐ効果が期待できます。これにより、安定した採用活動を行える点もコストの削減につながる大きなポイントです。

潜在層へのアプローチ

従来の採用活動では、積極的に転職を考えている人材でなければ出会うことができませんでした。しかし、企業側が主体的に候補者へコンタクトを取るこの採用手法では、本格的に転職を考えていない潜在層へアプローチをおこなうことができます。
これによって、従来では出会えなかったような優秀な人材や、求めるスキルを持つ人材にも出会えるメリットがあります。

自社にマッチした人材の獲得

ダイレクトリクルーティングでは、自社が求める人材に近い求職者を絞ってピンポイントでアプローチをかけることができます。
従来の採用手法では、応募があった求職者の中から人材を選ぶ必要があったため、業務で求められるスキルが足りていなかったり、採用後に企業側もしくは入社者側がミスマッチを感じたりするケースもありました。
しかしダイレクトリクルーティングでは、企業側がニーズにマッチした人材を発掘しやすくなります。より専門性の高い職種の採用活動も行いやすくなることが期待できます。

ダイレクトリクルーティングのデメリット・注意点

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ダイレクトリクルーティングに取り組む際は、次のようなデメリットや注意点を押さえておく必要があります。

・業務負荷が増加する
・長期的な視点が必要
・専門知識やノウハウが求められる
・採用期間が長期化する
・反応率が低いことがある

それぞれくわしく解説していきましょう。

業務負荷が増加する

ダイレクトリクルーティングでは、企業が主体的に人材発掘や求職者とのコンタクトをおこなうため、従来の採用活動に比べて業務負荷が大きくなる傾向があります。そのノウハウが蓄積されれば、採用活動が効率化されるメリットはあるものの、運用が社内で定着するまでは試行錯誤しながら進める必要があるでしょう。

長期的な視点が必要

ダイレクトリクルーティングは自ら人材を選定してアプローチすることから、従来の採用活動に比べてなかなか成果が出ないことも珍しくありません。
そのため、企業は継続的にダイレクトリクルーティングに取り組むための長期的な視点を持つ必要があります。短期的な成果を求めるのではなく、長期的な人材戦略を構築した上でダイレクトリクルーティングに取り組むとよいでしょう。

専門知識やノウハウが求められる

応募のあった候補者の中から人材を選定する従来の採用方法とは違って、ダイレクトリクルーティングでは企業が自ら人材を発掘していく必要があります。そのため、従来の採用方法と比較すると、採用担当者により専門的な知識やノウハウが求められるようになります。
より自社にマッチした人材を選定するためには、どのように人材を選定していくか社内でノウハウを蓄積していく必要があるでしょう。
また、求職者に自社の魅力を感じてもらうために、効果的なアプローチ方法も身につけることが重要です。優秀な人材を確保するため、過去の採用データを分析しながらより採用活動の精度を高めていくようにしましょう。

採用期間が長期化する

ダイレクトリクルーティングでは、求める人材がすぐには見つからないケースも少なくありません。ニーズに合った人材に出会うまで取り組むと、採用期間が長期化することも考えられます。
「今すぐ人手がほしい」という企業は、従来の採用方法のほうが向いている可能性もあるでしょう。

ダイレクトリクルーティングの費用

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ダイレクトリクルーティングでかかる費用には、主に「成果報酬型」と「先行投資型」の2種類があります。それぞれどのようなコストがかかるのかくわしく確認していきましょう。

成果報酬型

成果報酬型とは、実際に採用が成功した時点でコストが発生する費用体系です。ダイレクトリクルーティングでは企業が自ら採用活動をおこなうものの、人材データベースや外部のサポート会社を利用するケースも珍しくありません。
こういったサービスでは採用が決定した段階で費用が発生するケースがあり、「年収に対して◯%」などの形で費用が定められています。現在の費用感は、採用した人材の理論年収の25%程度が平均的だといわれています。
成果報酬型では初期投資のコストがかからず、採用が決まるまで費用が発生しないメリットがあります。そのため「採用が決まらないのにコストだけがかかる」というリスクを抑えたい企業に向いている費用体系です。
しかし一方で、複数人の採用を考えている企業では人数分の費用が発生することとなり、コストがかさんでしまうリスクがあります。

先行投資型

先行投資型は、採用活動を始める段階で一定のコストが発生する費用体系です。具体的には、専用プラットフォームを利用するための導入コストや契約費用、システム利用料などが挙げられます。
先行投資型は、成果報酬型のように採用人数によって費用が変動することがないため、人材を大量採用した場合に1人あたりのコストを抑えやすくなります。
ただし、採用の成果にかかわらず一定の費用が発生する点には注意が必要です。効果的な採用活動をおこなうためには、導入したデータベースを効果的に活用し、適切に候補者をリストアップするスキルを磨くことが重要です。
採用担当部署は、導入したシステムを長期的な視点で活用できるような人材戦略を構築するようにしましょう。

ダイレクトリクルーティング成功のためのポイント

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ダイレクトリクルーティングを成功させるためには、次のようなポイントを押さえておくことが重要です。

・ターゲット人材を明確にする
・効果測定によって改善点を把握する
・社内体制を整備する
・外部専門サービスを活用する

ターゲット人材を明確にする

採用活動を効率化するためには、ターゲットとなる人材像を明確にしておくことが重要です。この点が曖昧だと、採用後にミスマッチが生じたり、人材が見つかるまでに時間がかかったりする要因となり得ます。
ダイレクトリクルーティングに取り組む際は、「どのようなスキルを持つ人にアプローチするか」「採用において最も重視するポイントは何か」などを共通事項として社内で認識しておきましょう。

効果測定によって改善点を把握する

ダイレクトリクルーティングは従来の採用活動とは全く異なることから、最初はなかなか思うように進められないケースも少なくありません。社内で採用活動のノウハウを蓄積していくためには、反応が良かったアプローチ方法や効率的に人材を選定できたプロセスなどを把握し、結果によって改善策を検討するなど、PDCA(plan-do-check-act)サイクルを回すことを意識しましょう。

社内体制を整備する

ダイレクトリクルーティングを成功させるためには、社内体制を整備し、広報などの他部門との連携体制を構築することが大切です。たとえば、社内の協力を仰いで採用ページの情報を充実させたり、自社のSNSアカウントにおいて、企業ページや採用ページのメッセージに基づいて投稿したりして、さまざまな工夫をこらしましょう。
また、採用サイトやSNS、採用イベントなどにおいて、実際に働く社員の声を紹介し、働く環境を具体的に紹介するなど、求職者に自社の魅力がより伝わるような取り組みも効果的だといえます。

外部専門サービスを活用する

社内にダイレクトリクルーティングのノウハウがあまり蓄積されていない場合、ダイレクトリクルーティングに特化した外部の専門サービスを活用することもできます。こうした外部の専門サービスでは、人材の発掘や採用活動を効率的におこなうためのサポートを提供しているため、採用活動をスムーズに進めることができるでしょう。
これからダイレクトリクルーティングに取り組む企業だけでなく、すでに実施しているものの結果が出ていない企業でも活用を検討してもよいかもしれません。

まとめ

ダイレクトリクルーティングは、優秀な人材を確保する採用方法のひとつとして普及しています。ダイレクトリクルーティングには、求める人材に直接アプローチできるだけでなく、採用コストを削減できるなど多くのメリットがあります。
今後ますます、人材の確保が企業の重要課題となっていきます。激化する人材競争を乗り越える手段として、ダイレクトリクルーティングに取り組んでみてはいかがでしょうか。
 


<ライタープロフィール>
椿 慧理

フリーライター。新卒後に入行した銀行で10年間勤務し、個人・法人営業として金融商品の提案・販売を務める。現在は銀行で培った多様な経験を活かし、金融・人材ライターとして幅広く活動中。2級ファイナンシャル・プランニング技能士、1種外務員資格、内部管理責任者資格を保有(編集:株式会社となりの編プロ)