
仕事と家庭の両立は難しい?社会課題と両立の実現に向けた戦略

子育てや介護などを理由に「仕事と家庭の両立が難しい…」などと感じ、日々生活に疲弊している方は少なくありません。2025年4月には育児・介護休業法が改正され、看護休暇の対象者が小学3年生の子どもまで拡大されたり、介護休暇が取得できる労働者の条件が緩和されたりと、政府が仕事と育児・介護の両立を後押しする様子も見られます。
とはいえ、仕事と家庭を両立させるには、家族での役割分担や両立に役立つ各種制度の利用などを検討し、戦略的に取り組むことが必要です。
そこで本記事では、仕事と家庭の両立における課題を改めて確認するとともに、仕事と家庭を両立させている人の特徴、両立を実現するためのコツや心構えなどを紹介していきます。
目次
仕事と家庭の両立とは

まずは、仕事と家庭の定義、両立の重要性について説明しましょう。
従来の「仕事」と「家庭」の定義
「仕事」とは経済的な報酬を得るための活動のことです。仕事により経済的に自立し、商品やサービスを提供することで社会貢献できる側面もあります。
他方で「家庭」とは家族が生活する空間であり、精神面・経済面の両方で支え合う集まりのことです。リラックスして過ごすことができ、日頃のストレスや疲れを癒やす場所としての役割も持っています。
これまでは父親が仕事に従事し、母親が家庭を守るという役割分担により、仕事と家庭のバランスを維持してきました。しかし1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことをきっかけに、女性の社会進出が進むようになります。そして、児童のいる世帯の仕事を持つ母親の割合は、2023年に77.8%と過去最高を記録。母親が一人で仕事と家庭を両立させることは現実的ではなく、家族で協力し構築していくものという考えが当たり前になってきました。
参考:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
また、共働き家庭において、親の介護が課題となるケースも増加しており、介護を理由にやむを得ず離職を選択する「介護離職」は社会問題となっています。2023年に「介護・看護」を理由に離職した人は約7.3万人と、2000年に比べて約2倍の人数になりました。子育てだけでなく家族の介護も、仕事と家庭の両立における課題といえるでしょう。
参考:生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい? 介護離職をしないための支援制度は?」
仕事と家庭の両立の重要性
仕事と家庭のいずれにも共通しているのは「責任と義務が伴うこと」「個人の成長に影響を与えること」「人間関係が重要なこと」そして「人生において重要な要素であること」という点です。仕事と家庭はどちらもないがしろにすることはできません。だからこそどうすれば両立できるかが問題になりやすいといえます。
仕事と家庭をうまく両立できれば、自分自身の幸福度向上につながります。子どもに愛情を注ぐ時間を持つことができれば、子どもの成長に良い影響を与えられる可能性も高まるでしょう。
また、労働人口減少によって働き手が不足しがちな昨今では、企業にとっても労働力を確保できるメリットがあります。
つまり子育て世帯が仕事と家庭を両立させることは、社会的に見ても重要性が高く、尊重すべきことだといえます。
仕事と家庭の両立における課題

仕事と家庭の両立が重要だとしても、現実に難しいと悩む方は多くいます。どういった面が両立を妨げているのか、具体的に解説します。
家事・育児・介護の重い負担
仕事と家庭の両立が難しいと感じる理由には、家事や育児、介護の負担が重く、自分一人で抱え込んでしまっていることが挙げられます。その主な要因は以下の2つが考えられます。
「自分でやった方が早い」という考え
仕事で疲れ切ってから帰宅すると、家事や育児、介護を誰かに任せるほうが面倒に感じるかもしれません。家族に頼んだことが思うようにできておらず、かえってストレスになることもあるでしょう。結果として自分でやったほうが早いと考え、やるべきことを一人で抱え混んでしまうのです。
パートナーや家族からの協力不足
共働きが当たり前になったとはいえ、家事や育児を苦手意識を持つ男性はまだまだ多く、妻に任せきりというケースも少なくありません。家事や育児、介護はそれだけで1日が終わってしまうほど、多くのタスクが集積したものです。パートナーや家族の協力が得られないと、当然ながら仕事との両立は難しくなるでしょう。
長時間労働と仕事の要求度の高さ
長時間労働や仕事の要求度の高さが、家庭との両立を妨げている場合があります。子育て中や介護中の家庭であれば、長時間労働は大きな負担となるでしょう。また、仕事の要求度が高く、それに応えなければと頑張りすぎると、仕事で精神力も体力も使い果たしてしまいます。
これでは両立どころか、帰宅してから家事や育児など到底できないという状態になりかねません。
社会的な期待とプレッシャー
社会的な期待とプレッシャーで、仕事を続けられないと感じる場合もあります。共働きが当たり前になったとはいえ、親なら「子どもに常に寄り添うべき」、社員なら「常に成果を出すべき」など、従来からある価値観や周囲からの期待に振り回されることもあるでしょう。
仕事と家庭の両立には、社会全体の意識改革や、より柔軟な働き方を認める職場環境の構築なども欠かせない要素だといえます。
仕事と家庭の両立ができる人の特徴

仕事と家庭を上手に両立している人には、次のような特徴があるといえます。
常に完璧を目指さず、柔軟に調整できる
仕事と家庭を両立できている人は、常に完璧を目指さないことを大切にしているケースが多いといえます。完璧を目指すと、そのプレッシャーでかえって両立が難しくなることもあるからです。
「今日やるのが無理なら明日に回そう」「完璧ではないが8割はできたからOK」など、自分に完璧を求めず、常に柔軟に捉える姿勢が身についているのです。
効率的に時間を使える
仕事と家庭をうまく両立している人は時間の使い方が上手で、さまざまなタスクを効率的にこなしている様子が見られます。タスクの優先順位を決めるのが早く、やるべきことが明確です。あらゆるタスクをこなすため、一つのことに集中できるよう順序立てることで、効率的に時間を使っているのです。
自分に合った力の抜き方を知っている
息抜きの方法を知っていることは、多くのタスクをこなせている人に共通する特徴です。「ストレスがたまったらこれをやろう」と、趣味に没頭したり短時間の運動を取り入れたりしています。また「息抜きをしたらまた頑張る」という切り替えの早さも、仕事と家庭を両立させている人の特徴です。
仕事と家庭の両立を実現するためのコツ

仕事と家庭を両立させている人の特徴を踏まえた上で、実際に両立を目指すために押さえておきたいコツを確認しましょう。主なコツは以下のとおりです。
・家事と育児・介護の役割分担
・タスクの優先順位付けと時間管理
・リフレッシュと自己管理
・支援システムの活用
・柔軟な働き方の検討
家事と育児・介護の役割分担
まずは、パートナーや家族と、家事や育児、介護の役割分担をはっきりと決めておきましょう。「なんとなく」「気づいたほうが」といった曖昧な役割分担では、揉めごとの元になります。役割がどちらか一方に偏らないようにするためにも、先にきちんと決めておくのがポイントです。
タスクの優先順位付けと時間管理
次に、限りある時間をうまく使うために、タスクの優先付けをしましょう。たとえば、タスク管理ツールを使うと、タスクやその負担割合が可視化されるので分かりやすくなります。優先度の高い順にタスクを並べ替え、終わったタスクから消していけば、やり忘れや間違いを起こす心配もありません。
また、スケジュール帳やスマホなどで確認できるカレンダーアプリを使って、予定を管理するのもよいでしょう。タスクが増えるとどうしても忘れやすくなるので、カレンダーのアラーム機能も有効活用しましょう。
リフレッシュと自己管理
仕事と家庭を両立させるには、まず自分が健康でいることが重要です。趣味や運動などでしっかりとリフレッシュする時間を持ちましょう。睡眠時間をたっぷり取るなど、しっかりと休息を取ることも大切です。根を詰めて働いても、効率は上がりません。自己管理の一貫として、遠慮せず自分にご褒美をあげる時間をできるだけ取るようにしましょう。
支援システムの活用
国や自治体、企業などが提供している両立支援制度は積極的に有効活用しましょう。
たとえば「子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)」は、子育てをサポートしたい人とサポートを受けたい人をつなぐマッチング制度です。事前に登録しておけば、仕事が忙しいときの保育園の送り迎えや、保育施設の時間外に子どもを預かるといったサービスが受けられます。
また、企業によっては、「男性の育児休暇取得推進」「短時間勤務を小学校3年生まで拡大する」といった独自の取り組みをおこなっているところもあります。
介護における支援制度としては「介護保険制度」や「介護休業制度」などが挙げられます。介護保険制度は65歳以上が対象の制度だと思われがちですが、一定の条件を満たせば40~64歳の方も対象となります。
また介護休業制度は、介護が必要な1家族につき年3回まで、通算93回まで休業できる「介護休業」や、介護が必要な1家族につき年5回まで、1日もしくは時間単位で取得できる「介護休暇」などから成る制度です。
活用できる支援や制度は積極的に利用し、少しでも自分や家族、子どもへの負担を減らすことは、仕事と家庭を両立させるためのコツです。
参考:
子ども家庭庁「子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)の概要」
厚生労働省「介護保険制度の概要」
厚生労働省「そのときのために、知っておこう。介護休業制度」
柔軟な働き方の検討
「フルタイムで出勤する」という働き方にこだわらず、自分の生活にあった働き方を検討することも両立のコツです。時短勤務やフレックス勤務、在宅勤務といった働き方ができれば、家族の予定などを踏まえながら働きやすくなります。
また、より柔軟な働き方としては、派遣会社のサポートを受けながら自分のライフスタイルに合った職場で働く「派遣社員」としての就業が挙げられます。子育てや介護が落ちつくまで、一時的に派遣社員として働くのも一つの方法です。
仕事と家庭の両立に向けた意識と心構え

仕事と家庭の両立を実現させるためには、次のような意識や心構えを持つことも大切だといえます。
「両立」から「共存」への考え方
仕事と家庭を「両立させる」のではなく「共存させる」という考え方もあります。たとえば「ワークインライフ」は、「ライフ(生活)にはさまざまな要素があり、そのうちのひとつがワーク(仕事)である」という考え方です。仕事と家庭を同じようにこなす必要はありません。どちらかに打ち込むこともあれば、どちらかの手を緩めることもよしとします。
こうした「共存」の考え方を取り入れれば、「両立させなければ…」という窮屈さやプレッシャーから解放され、暮らしに余裕を持つことができるでしょう。
完璧主義を手放す
窮屈さやプレッシャーという意味では、完璧主義も問題です。仕事も家庭も最初から最後まで完璧にしようとすると、相当な労力を消費します。本当に大切な部分を除き、常にトライアンドエラーを繰り返すつもりで、気楽に構えておくことが重要です。
「できないこと」より「できること」に目を向ける
できないことにばかり目を向けていると、どんなことでもつらく感じてしまいます。仕事と家庭を両立する際には、山のようなタスクに対応しきれないことも多々あるはずです。
だからこそ「今日はこれができた」「子どもに喜んでもらえた」など、できたことに目を向けましょう。前向きな気持ちを積み上げれば、多忙な日々も乗り越えやすくなります。
仕事と家庭を両立させるための職場選びのポイント

仕事と家庭を両立させるためにこれから職場を選ぶなら、以下のポイントを踏まえて検討しましょう。
自宅や保育・介護施設と職場の距離
仕事と家庭を両立させるためには、移動時間の効率化が欠かせません。自宅や保育施設と職場の距離が近ければ、送迎に余裕を持てます。それぞれの距離が遠い場合、仕事の時間を減らしたり、子どもの保育時間を延長したりする必要性も出てくるでしょう。
介護・デイケア施設は送迎付きの場合が多いものの、何かあったときに駆けつけられる距離だと安心感があります。
移動に伴う負担を減らし、時間を有効活用できるようにしましょう。
急なシフト変更にも柔軟に対応できる組織体制
小規模の店舗など最小限の人数で回している職場は、急なシフト変更に対応してもらえない可能性があります。従業員が多く、急なシフト変更にも対応しやすい体制を整えている職場や、臨機応変な働き方ができる職場を選ぶのも手段のひとつです。
加えて、介護休業制度などの各種制度の利用実績も、入社前に確認しておきたいポイントです。
子育て・介護に理解がある職場環境
子育てや介護に理解のある職場を選ぶことも大切です。必要な支援制度が整備されているだけでなく、それらを利用しやすい環境や文化が根付いている職場なら、利用時の精神的負担も軽減できるでしょう。
すでに子育て中・介護中の社員が多く働いていれば、周囲からの理解が得やすくなり、仕事との両立も実現しやすくなるはずです。
まとめ
仕事と家庭を両立させるには、家事や育児、介護をパートナーや家族と分担し、タスク整理をして効率的に家事をこなすことが求められます。とはいえ、過度に息巻く必要はありません。周囲や各種制度をうまく頼って、自分の負担を減らしながら上手にやりくりすることが重要です。
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<ライタープロフィール>
筆弓あかり
子育てと介護のダブルケアと仕事の両立に悩みながら、ライターとして活動中。美容、転職、介護を中心にさまざまなメディアの記事執筆、ディレクションを担当。転職、採用・人事、法律メディアで編集業務に携わる。「働き方」「仕事の選び方」「ライフスタイル」「美容」に強みを持ち、幅広いビジネスパーソンに向けて発信を続けている
(編集:株式会社となりの編プロ)